1万円で作る!大容量収納ベッド
以前作った超手抜きベッドが限界に来ていたので、予算1万円でまともな大容量収納ベッドを自作してみました。
仕様
まず、今まで使っていたベッドの使い心地や懐具合を考慮し、以下の条件を課しました。
- 予算は、1万円以内。
- 材料は、ホームセンターで購入できるものを使う。
- 器用ではない私でも、簡単に作れる方法をとる。
- 天板は市販のシングルベッドよりも、やや大きめに作る。
- 部屋の狭さを考慮し、ベッドは小上がりとして使えるようにする。
- 高さは収納量確保のため、椅子と同じぐらいの高さにする。
- 収納部は、ホコリが入りづらい密閉構造にする。
- ベッドには、マットレスではなく敷布団を敷いて使う。
まず、今まで使っていたベッドの使い心地や懐具合を考慮し、以下の条件を課しました。
調査
とりあえず設計の参考にするため、量販店・家具店で1~3万円台の低価格帯のベッドフレームを観察してみました。
1万円台のものは、木製・金属製フレームにすのこを乗せたもの、2万円以上のものはカラーボックスでも使われているプリント紙化粧繊維板に補強をつけて組んでいるものが多いようでした。
四角い枠にすのこ板をはめて脚をつけたり、テーブルのように天板に足をつけただけの構造にするのが基本のようです。
なかには、部材を極限まで薄くして補強は最小限にとどめるといった強度・耐久性に不安がある構造をとっていたり、すのこ板の隙間を限界まで広げていたり、部材を減らすために高さ20cm程度のローベッドにしていたり、すのこの代わりに幅広ベルトを編み巡らせていたりするなど、さまざまな工夫がなされていました。
これらを参考に、自作ベッドの構造を検討します。
構造の検討
木製フレーム
まず、四角い木製フレームに足をつけ、側板・すのこの天板を貼る、オーソドックスな構造を検討しました。
ただ接合部のほぞ加工が難しいので、主柱に短い柱をねじ止めし、その上に桁を乗せることにしました。
しかし安価な1×4のSPF材を使ったとしても、材料費が1万円を超過してしまうことが判明し、断念しました。
パイプフレーム
次に車中泊用のパイプベッドのようなパイプフレームを検討してみました。
軽量・丈夫ではあるものの、横揺れ対策が課題です。
車中泊の場合、座席の後ろ側や壁面に押し付けて横揺れ抑える仕組みになっているようです。
しかしフレームの材料費だけで1万円になり、横揺れ対策を施したり、天板・側版が貼れません。
そういうわけで、これも断念しました。
スチールラック流用のベッドフレーム
既製品のスチールラックを、ベッドフレームに転用できないかを検討してみました。
スチールラックを横倒しにするだけなので、組み立てが簡単で、引っ越し時の分解も容易です。また強度も横揺れ対策も完璧です。
ただし、ちょうどいい大きさを探すとセミダブルサイズ(2100×1200×450mm、棚板3枚、耐荷重120kg)になってしまい、値段は安くても1.2万円ぐらいになります。
またしても、フレームだけで予算超過です。
カラーボックス流用のベッド
DIY本では定番の、カラーボックスの上に天板を乗せるだけの、お手軽ベッドも検討してみました。
これは難易度が低く、側版を張らなくていいことがメリットです。ただ収納部が低く細かく区切られてしまうので、毛布などの大物の収納を諦めなくてはなりません。また天板の大きさは、多少調整できるとはいえ、カラーボックスのサイズに左右されます。カラーボックスの代わりに大きい本棚を使用するにしても、価格面で難があります。
そして、これが最大のデメリットなのですが、強度に不安があります。カラーボックスは材質・構造的には垂直の力にはそこそこ耐えられるように作ってあるのですが、接合部の仕組み上、横・斜め方向の力には弱いです。
また背板を外すと、極端に強度が下がります。
これに補強材を入れると、ただでさえ狭い収納をさらに狭くすることになります。
そのため、子のベッド小上がりとして使うことはできなそうです。
難易度が低い割にはデメリットが多いので、これも断念しました。
本棚構造
そこで、丈夫でちょうどいい大きさのカラーボックス……というか、背板のない本棚に天板をつけたものを自作できないかを検討しました。
最初は本棚のように縦長で設計していたのですが、板材の調達や製作時の取り回しを考慮して、日の字型の2段の棚を作り、これを3連結する構造にしました。
板材を使う面積が広いので予算超過になるだろうなぁ…と思いながら積算してみたところ、なんと予算の1万円以内に収まってしまいました。
側板・天板に住宅の内装の下張りに使われる安価な針葉樹合板を、柱に安価な天井用下地材の野縁(のぶち)を使うことが功を奏したようです。
建築用の合板を使用しているので丈夫ですし、大きさも自由自在です。
また柱もつけるので、ゆがみも問題なさそうです。
製作の難易度も高くなく、毛布や肌掛け布団などの大物を収納する空間も充分確保できます。
そういった訳で、今回は日の字型3連結構造を採用しました。
設計
構造が決まったので、設計の細部を詰めていきます。
天板の広さやベッドの高さは以前の自作ベッドを踏襲し、シングルサイズよりもやや大きめにしました。
天板が広いと、いろいろメリットがあります。
- 枕元に、読みかけの本や目覚まし時計・メガネを置く場所が確保できます。
- 身体が敷布団から外れても、天板に乗っていることが感触で分かるため、転落を防止できます。
- 敷布団が多少ずれていた場合、天板の広さに若干の余裕があるので、敷布団の端に乗っても転落しません。
高さは、無駄のない板取り・カット回数を追求した結果、467mmに設定しました。
ちなみに介護ベッドはマットレスの厚みも含めて高さ400~500mmのものが多く、また椅子座面の理想の高さは400mm程度( (身長×0.25)-10mm )で、収納付きの小上がりは300mm程度で設計するそうです。
高ければ高いほど転落時にケガする恐れはありますが、前述のように天板が広めなので、簡単に転落することはありません。
またちょっと高いと立ち上がるときに軽い前傾姿勢になるので、ベッドからの立ち上がりがとても楽になります。
また組み立て・引っ越し時の運びやすさと板取りを勘案したところ、1ユニットの大きさは1100×745×467mmになりました。
これを3連結すると、1100×2235×467mmになります。
シングルベッド(約1000×2000mm)よりもひとまわり大きく、セミダブルベッド(約1200×2000mm)よりは幅が少し狭いといったところでしょうか。
ちなみに引っ越し時の運び出しやすさを最大限考慮するなら四角形6連結が最適ですが、コスト面で大差がない割には手間とがたつきの発生のリスクを考慮し、日の字型3連結を採用しました。
ユニットは、中間に仕切り板を入れた日の字型にしています。
天板のたわみ防止の目的だけであれば、桁を設けたり中柱を立てればよかったのですが、板取りの関係で側板が余ってしまうので、今回は仕切り板として使用しました。
なお、もっと広い収納を確保したければ、仕切り板ではなく桁にしたほうがいいでしょう。
仕切り板の設置位置は、中間の約530mmの位置にしています。
一般の住宅建築ではフローリングだと300mm以下、畳敷きだと450mm以下の間隔で根太を設置するそうです。
ただベッド上にタンスやピアノなどの重量物を乗せるわけではないので、約530mmでも問題ありません。
ちなみに完成後、部屋の模様替えで中身の入ったタンスをベッドの上に置いてみましたが、まったく問題はありませんでした。
なお材料費を安くしようとして側板と天板の合板でそれぞれ違う板を使うと、板取りの関係で材料の無駄が多くなって高くつきます。今回は住宅の床・壁の下張りにも使われ、充分な強度がある12mmの針葉樹合板を使用しました。
見た目が気になるようであれば、これに塗料や木材用ワックスを塗ってもかまいません。
材料費は高くなるので今回は採用しませんでしたが、見た目がましな構造用合板や、綺麗な化粧合板を使う方法もあります。
収納部については、以前の超手抜きベッドでは開放的な作りでホコリがたまり放題で掃除が大変だったため、今回は密閉構造にしました。
ただ、湿気対策として通気孔を開けました。
柱は、天井の下地材として使われている安価な荒材の野縁を使いました。
ただすべての柱を野縁で作ると端材が約1m余ってしまうので、価格的にメリットはありませんが、一部を建物の基礎工事で使われる遣り方の杭で代用しました。
なお木材をカットすると、のこぎりの刃の幅(3mm程度)だけ木材のサイズが小さくなることがあり、これががたつきの原因になる恐れがあります。
そのため、柱は側板よりも長さを5mm短くしています。
また木材カットは、素人の手作業だとゆがむのは必至なので、ホームセンターのカットサービスを使用しています。
材料
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- 針葉樹合板 12mm(1820×910×12mm)
- ¥1,155×6枚 ※価格重視。
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- 野縁(赤松、30×40×1985mm)
- ¥285×4本 ※柱16本分。スリムビスがはみ出ない太さであれば、太さは何でもよい。
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- 遣り方用の杭(赤松、30×40×1200mm)
- ¥219×1本 ※柱2本分。野縁のほうが価格は安いが、端材を少なくするために購入。
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- 木ブロック 8個入り(30×30×30mm)
- ¥110×2袋 ※天板四隅の固定用で12個必要。野縁の切れ端などでも代用可能。
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- スリムビス 26mm(160本入り)
- ¥494×1箱 ※見た目を気にしないなら、普通のビスでも良い。柱1面につき3本、木ブロック1個につき2本で、合計132本使用。ビスの長さは、合板の厚さ×2以上を基準に選定。
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- 蝶ボルト M8×30mm(2本入り)
- ¥177×2袋 ※箱連結用で4本。長さは、合板2枚分の厚さ24mm+ナットの厚さ5mmで選定。
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- フランジナット M8(4個入り)
- ¥125×1袋 ※箱連結用で4つ。フランジなしの場合、ワッシャーが必要。
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- 材木カット代
- ¥20×2カット(合計12カット、ただし会員は10カットまで無料) ※カット価格はホームセンターによって異なる。
合計:¥9,406 ※製作当時の材料費です。
また針葉樹合板の板取りは、下図のようにしました。
材料の合計重量は65kg程度で、ホームセンターの木材カットサービスを使用したので、乗用車のトランクに乗せて持ち帰ることができました。
なおここには書いていませんが、手持ちの材料として木工用ボンドと、ブロックヤスリも使用しました。
組み立て
紫色で示した側板・仕切り板に、黄色で示した柱を木工用ボンド・スリムビスを併用して固定し、それを桃色で示した側板に固定します。
側壁同士を直接ネジ止めすると合板が割れたり枠がゆがむ恐れがあるので、側板の角に柱(図の黄色の部材)を立て、さらに板割れしづらいスリムビスを使ってとめます。
スリムビスは柱1面につき3本使用し、さらに強度を増すために木工用ボンドで柱を側壁に貼りつけてからとめています。
また省力化のためニス塗り・塗装はせず、角と木口・表面をヤスリがけしただけにとどめました。
無塗装の場合、ヤスリがけを念入りに行わないと、寝ている間に体にトゲが刺さることがあります。
なお合板の製造元などが印刷されている面が内側に来るように組み立てれば、無塗装でも外見はあまり気になりません。
天板は、ズレ防止のために現物合わせで木ブロックをビス2本でとめます。
各ユニットは、蝶ボルトとフランジナットでの連結します。
なおボルトの穴は、現物合わせであけます。
収納部を完全な密閉構造にすると湿気がたまってカビが発生する恐れがあるので、適当な間隔で側板や仕切り板に小さな通気孔を9つあけます。
この穴からホコリが侵入するのではないかと懸念する人がいると思いますが、この程度の穴なら問題はありません。
気になる方は、穴の内側に不織布などを張ってください。
最後に板取りの関係で720×455mmの仕切り板3枚と、165×1820mmの板が2枚、柱の端材が5本残ります。
壁の巾木とベッドとの隙間を埋めるために使ったり、ベッドボードを作ったり、他の物を作る材料として活用するなど、各自で工夫してください。
完成
カット・組み立て時の誤差をできるだけ軽減する設計にしたこともあり、天板の高さが最大2mmズレたくらいで、ほぼ完璧でした。
この程度のズレなら、上に敷物や布団を敷くと段差がわからなくなるので問題はありません。
なお大容量収納ベッドを作ってから、この記事を執筆した時点で8か月が経過しましたが、今のところ問題は発生していません。
ベッドの高さを高めにとったので、冬は床を這う冷気に直接当たらないので寒くないし、ふかふかの掛け布団をしまっておける大容量収納も確保できて大満足です。
寝汗が収納部に入り込んでカビが生えることを懸念していたのですが、梅雨になってもカビが生える様子はありませんでした。
また部屋の模様替えのため、一時的にタンスや荷物を天板に乗せたりもしましたが、ビクともしませんでした。
ちょっと頑丈過ぎたかもしれないので、もっと薄い9mmの合板で作ってもよかったかもしれませんね。
おまけ - 誰でも簡単に作れる超手抜きベッド
ついでに7年前に製作して使っていた超手抜きベッドについても紹介しておきます。
農業用の採集コンテナを12個並べ、その上に物流用の中古プラスチックパレット2枚を乗せ、動かないように手荷物固定用のマジックテープで固定しただけです。
大きさは、市販のシングルベッドよりやや大きめの1100mm×2200×425mmになります。
材料
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- 採集用コンテナ(安全興業 365×520×305mm)
- 約¥500×12個
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- 中古プラスチックパレット(岐阜プラスチック 1100×1100×120mm)
- ¥1,000(送料込み)×2枚 ※ヤフオク!できれいな中古品を購入。
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- マジックテープ製の手荷物結束ベルト(3本入り)
- ¥100×2セット ※採集用コンテナとプラスチックパレットの固定用。100円ショップで購入。
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- 1×4 SPF材(6フィート(約1820mm) ホームセンターで購入)
- 約¥200×2本 ※プラスチックパレットの補強材。半分に切って使う。
合計:約¥8,600 ※製作当時の材料費です。
上には書いてありませんが、手持ちの1×4材の端材を使って転落防止柵も作りました。 この柵は高さ15cmくらいのコの字型のはめ込み式なのですが、2つのパレットをしっかり連結するという目的も兼ねています。 ただ、ベッドに慣れてしまうと柵は邪魔なだけでした。
なお強度に不安を抱く方もいると思いますが、採集コンテナは野菜・果物などの重いものをたくさん入れて何段も積み上げるという使い方をしますし、田舎の祭りではステージの土台としても使われることがあるので、強度は充分です。
またプラスチックパレットは物流用の製品なので、1枚あたり動荷重1トン、静止荷重4トンです。
ただプラスチックパレットのメッシュ部分は、局所的な加重をかけると簡単に折れてしまいます。
そこで強度が弱い部分に6フィート(約1820mm)の1×4のSPF材を半分に切ったものを1本ずつ差し込み、補強を施しました。
私は横着して補強用のSPF材を入れずに長年使っていたので、数年でパレットがボロボロになってしまいました。
ただ、きちんと補強しておけば長く使えると思います。
このベッドは誰でも簡単に組み立てることができ、また通気性がよいので万年床でも布団がカビることがないことのメリットです。
またカゴもパレットも鋸で簡単に切れるため、普通ゴミとして捨てることもできます。
デメリットは、通気性が良すぎるので収納部にホコリが入りまくることでしょうか。
またパレットの上に布団を敷いて長時間寝ると、パレットのメッシュ部分が背中に当たって痛くなることがあります。
そのときはに下にゴムマットを敷くか、厚みのあるマットレスを使う必要があります。