更新:2018-10-26
作成:2015-08-01

電子工作Tips

電子工作をしているときに浮かんだ疑問、ノウハウ・必要な道具等をまとめてみました。
この手の質問に答えてくれる書籍は、あまり見かけないんですよね。

基本

持っていた方がいい道具は?

特に記載がない限り、100円ショップで購入できるものでも構わない。

絶対に必要な道具

スチールたわしを詰め込んだ小瓶に、はんだごてのコテ先を入れている画像。
こて先クリーナー代用品の使用例

できればほしい道具

なくてもなんとかなる道具

部品・基板を押さるための手が足りない!

テープで張り付けたり、洗濯バサミで挟んだりと工夫する。
それがわずらわしいのであれば、クリップ付きスタンド(ヘルピングハンズ・ヘルパーとも呼ばれている)を使用すること。

完成品を入れるケースは何を使えばいいの?

古い電子工作の書籍では石鹸箱がよく使われていたが、現在では100円ショップで売られている食品用のタッパーを使うことが多い。
その他にも、丈夫な紙箱・クッキー缶・名刺ケース・はがきケース・ペン立て・ボトルガムの容器なども使用されている。
なお市販品のような見た目にしたい場合は、タカチ電機工業のプラスチックケース・金属ケースが定番。
タカチ電機工業のケースは比較的安価であるため、小ロット受注生産の電機製品でも使用されていることがある。

パソコンで回路図を書くには何を使えばいいの?

Eagle・PCBE・KiCad・CADLUS X・D2CADなどがある。
簡易なものであれば、Windows用フリーソフトなら水魚堂の「BSch3V」が定番。 Mac版のBSch3VのMac版「Qt-BSch3V Modified」もある。
また回路シミュレータ(LTspiceなど)で回路図を作り、スクリーンショットをとるという手もある。

低周波・高周波の違いは?

人間の可聴域(約20Hz~約20kHz)が、およその目安となっている。

低周波:人間の可聴域より、低い周波数。~数十KHz。
高周波:人間の可聴域より、高い周波数。数十KHz~。ただし電波・通信などでは10kHz以上(電波法第100条 高周波利用設備の定義より)。

強電・弱電の違いは?

強電とは強電流電気、弱電とは弱電流電気の略称。
48V以下の電気設備・電気回路が弱電、それを超える電圧のものが強電と呼ばれている。

48Vの根拠は、感電事故を起こす電圧が48V前後だからと言われている。ただ電信・電話で使用している電圧が直流-48Vであることから、実務上の都合で直流48V以下としたのではないかと思われる。
また「電気設備の技術基準」の小勢力回路の解釈に準じて、直流60V以下で通信・信号の伝送に用いるもの等(総務省商務流通保安グループ電力安全課「電気設備に関する技術基準を定める省令の解説」より)も、弱電と呼ぶこともある。
なお総務省「電気設備に関する技術基準を定める省令の解説」では、『強電と弱電という区別は昨今では非常に難しくなってきており、エネルギーの多少よりも用途により分けるべきという考え方もあるが、現在の法体系のもとでは、これを一概に用途で分けることもできないのが実情である。』とも述べている。

LED

電流制限抵抗の求め方は?

トランジスタやオペアンプで定電流回路を組んだり、定電流ダイオード(1本¥30~60)を使う方法もあるが、電流制限抵抗のほうが安価(カーボン抵抗1本で¥10、100本入りでは1本あたり¥1)で簡単。

電流制限抵抗R = ( 電源電圧Vcc - LEDの順方向電圧Vf ) ÷ LEDの順方向電流If
最大定格を越えて使うとLEDが壊れやすくなるので、電流制限抵抗は計算値よりもやや大きめにした方が安全。

電源ランプ・表示灯として使うときに流す電流値は?

Vf=2.1V If=20mAの高輝度LEDの場合、1~5mAがちょうどいい。1mA以下にすれば、寝室で使ってもまぶしくない。
ちなみに自作LED照明に定電流ダイオードを使う場合は、最大定格の順方向電流If=20mAよりも余裕を持たせ、若干少なめの15mAか18mAが使われることが多い。

プラス・マイナスの簡単な見分け方は?

足が長いほうがマイナス。
砲弾型LED場合は、樹脂内部の金属板の大きさで見分けることができ、大きい方がプラス。

LEDの樹脂の内部をクローズアップした写真。
砲弾型LEDの拡大写真
左側がマイナス、右側がプラス

普通のLEDと高輝度LEDの見分け方は?

簡易的に見分けるには2.0V 10mAで点灯させ、眩しく感じれば高輝度LEDと判断する。
なお砲弾型の普通のLEDではVf=2.1V If=10mA、高輝度LEDではVf=3.5V If=20mA程度の製品が多い。

LEDの色の使い分けは?

分野や規格によって使い分けは異なるが、注意喚起をする際に赤色を用いるのが基本。
最近の家電製品や一般の産業用機械では、ONは緑色、電源が入っていないことを知らせるためにOFFは赤色もしくは消灯させることが多い。
一方、住宅などの壁面スイッチではつけっぱなしを知らせるためにONは赤色を、産業用機械では非常・危険を知らせる警告灯では赤色を、配電盤・高圧電気設備では感電の恐れを警告するため通電中を示す表示灯では赤色を使用している。

色覚障害を持つ人の中には赤色・緑色が見分けづらい人がいるため、代替としてオレンジ色・青色が使われることがある。
なおデザイン上の都合で青色LEDを使用する場合は、人間の視覚の性質上まぶしく感じるので、通常よりも電流値を少なくする・寝室などに置く機器では使用しない等の配慮が必要。

ボリューム

ボリュームの選び方は?

音楽用ミキサーではスライドボリュームが使われているが比較的高価なので、電子工作では安価な回転ボリュームが使われることが多い。
ステレオの場合は2連ボリュームを使うと便利。左右バランスの微調整が必要な場合は、別途で可変抵抗を追加する。
抵抗値・カーブは様々だが、イヤホン端子・ピンジャックなら10kΩ Aカーブ(対数変化)で充分。
ミキサー回路の場合、他の機器の出力端子に電流が流入するのを防ぐため、抵抗を直列に接続することがある。
なおツマミは別売なので、別途購入する必要がある。

小型ミキサーに使われているスライドボリュームの写真。
スライドボリュームの使用例

回転ボリュームの定格は?

データシートを参照。抵抗値・カーブは部品に刻印されていることが多い。
電子工作でよく使われるものだと、最大0.1~0.5W、抵抗の誤差±20%。

回転式ボリュームの拡大写真。
このボリュームの上部には、
B25 K(Bカーブ 25kΩ)と書かれている

回転ボリュームの配線が分からない

右に回すと音が大きくなる(抵抗値が下がる)ようにする場合は、端子を下向きに置き右から順に、①IN、②OUT、③GND。
右に回すと音が小さくなる(抵抗値が上がる)ようにする場合は、①GND、②OUT、③IN。

GNDのつなぎ先は、“そのまま回路のGNDに接続”・“GNDとOUTを短絡”の2種類がある。
これはボリュームが接触不良をおこしてOUTが絶縁状態になった際の、電流の流れ方が違う。
前者は電流がすべてGNDに流れて、後段には一切流れない。後者はボリュームを絞り切った時と同じ状態になり、電流はそのまま後段に流れる。
なおGNDを未接続にする方法もあるが、接触不良をおこした場合に回路の設計によっては不具合・故障の原因となることがある。

回転ボリュームの端子と、回路図記号との位置。
回転ボリュームと回路図記号

回転ボリューム上面の突起が邪魔

ケースに回転ボリュームを固定する際にナットだけでは不安な場合、ケースにこの突起をひっかける穴を開けて固定する。
突起が不要ならば、ペンチなどで折り取る。

回転ボリュームの軸が長すぎる

金鋸で切断する、ナットなどのスペーサーを挿入して長さを調整する、深さがあるツマミを使うなどの方法がある。

スイッチ

スイッチの方向・配置はどうすればいいの?

片切スイッチの場合、右もしくは上を押すとON、左もしくは下を押すとOFFになるのが原則。
またスイッチが複数ある場合は、スイッチがある場所から、遠いところにあるものを操作するスイッチは操作盤の上側もしくば右側に配置し、近いところにあるものを操作するスイッチは操作盤の下側もしくは左側に配置する。

配線材

リード線は何を使えばいいの?

リード線(ビニル線・ビニル絶縁電線)は、AWG22(太め 0.3sq相当)~AWG26(細め 0.12sq相当)を使う。
LANケーブルにはAWG24のビニール線が使われている製品が多いので、100円ショップで売っているLANケーブルから取り出すこともできる(規格上はカテゴリ5・5eがAWG24~26、カテゴリ6がAWG22~24を使用 ANSI/TIA/EIA-568より)。

定格はAWG22が7A 300V 80℃、AWG24が5A 300V 80℃、AWG26が4A 300V 80℃。
ちなみにAC電源ケーブルで使われているビニル平形コード(VFF 0.75sq、JIS C 3306:2000規格品)は、7A 300V 60℃。

基板裏の配線材は何を使えばいいの?

書籍では「抵抗・コンデンサの足の切れ端を使う」・「足を切断せずに曲げて使う」などと書かれているが、長さが中途半端であるため非常に使いづらい。
そのため直径0.6mm程度のスズメッキ線(銅の針金に錫をメッキしたもの)を使うとよい。
100円ショップで売っている直径0.5mm程度の銅の針金でも代用可能。

ポリウレタン線って何?

ポリウレタン線(UEW)はエナメル線の一種で、銅線をポリウレタン系樹脂でコーティングして絶縁したもの。
コイル・トランスの製作や、ジャンプワイヤとしても使用される。
耐熱温度は約120℃で、ハンダの中をくぐらせるだけで被覆が剥がれるように作られている(JIS C 3202:2014 附属書B より)。
強くこすると、被覆が剥がれるので注意すること。

コンデンサ

コンデンサの選び方は?

コンデンサには容量と周波数特性があるので、下の表を参考に選定する。
一般的には、電源の平滑用コンデンサには電解コンデンサ、バイパスコンデンサ(パスコン)には安価な積層セラミックコンデンサ、音声信号などのカップリング用・デカップリング用コンデンサには場合は無極性電解コンデンサ・フィルムコンデンサが使用される。
なおセラミックコンデンサは振動・衝撃が加わるようなところで使うと、圧電効果でパルス電流が発生するためノイズの原因になることがある。
またごくまれではあるが、入力信号とセラミックコンデンサの固有振動数が一致すると共振を起こし、うなり音(鳴き)を生じることがある。その際はセラミックコンデンサをコーキング材・グルーなどで基板に固定したり、違う大きさのセラミックコンデンサに変えて固有振動数をずらすなどの対策をとる。

電解コンデンサの寿命は、85℃で2000時間が一般的。年月の経過とともに電解液が揮発して静電容量が低下するので、設計寿命を超えて使う場合は注意が必要。
コンデンサは温度が高くなるほど寿命が短くなり、また静電容量が増える傾向にある。使用温度が10℃下がるごとに寿命がおよそ2倍になると言われている(アレニウスの法則)ため、安価な85℃品よりも105℃品の方が長持ちする。

静電容量(目安)

積層セラミックコンデンサ: 1pF~100μF
フィルムコンデンサ: 100pF~100μF
タンタル電解コンデンサ: 0.1μF~1mF
アルミ電解コンデンサ: 0.1μF~10mF

周波数特性(目安)

電解コンデンサ: 100~100kHz(低周波領域)
フィルムコンデンサ: 100~100kHz(低周波領域)
積層セラミックコンデンサ: 100k~1GHz(高周波領域)

ジャック・プラグ

DCジャック・プラグの規格は?

EIAJ RC-6705(廃止 IEC 60130-10でも規定)の外径5.5mm、内径4.0mm、長さ9.5mm、形状 TYPE A(規定はないが、通常は電圧は最大12Vもしくは48V、電流は0.5A・1A・2A・5Aのいずれか)のプラグがよく使われている。
ちなみに新規格(EIAJ RC-5320A 規定はないが、通常はプラグの先端が黄色)のものもあるが普及率は低く、ソニー・パナソニックの製品ではよく使われているものの、それ以外のメーカーの製品ではあまり採用されていない。
ノートパソコンのプラグはメーカー・機種によって異なるが、外径5.5mm、内径2.5mm、形状 TYPE A(IEC 60130-10で規定)が使われていることが多い。
この他にもEIAJ RC-5321があるが、これは電源出力端子用であるため、目にする機会はほぼない。

EIAJ RC-5320Aで規定されているプラグの規格(長さ9.5mm、定格電流2A)
区分/規格名電圧外径内径形状備考
区分1(EIAJ #1)~3.15V2.35mm0.7mmTYPE A
区分2(EIAJ #2)3.15~6.3V4.0mm1.7mmTYPE A
区分3(EIAJ #3)6.3~10.5V4.75mm1.7mmTYPE A
区分4(EIAJ #4)10.5~13.5V5.0mm3.3mmTYPE Bピン直径1.0㎜
区分5(EIAJ #5)13.5~18.0V6.0mm4.3mmTYPE Bピン直径1.4㎜
EIAJ RC-532212V・24V6.0mm3.1mmTYPE Bピン直径1.0㎜ 規格名称「車載機器用直流12/24V共用型電源プラグ」
EIAJ RC-670512V5.5mm2.1mmTYPE A旧規格〈廃止〉 定格電流0.5A
※TYPE A: ジャックの中心にピンがあるもの
 TYPE B: プラグの中心にピンがあるもの

DCジャック・プラグの極性は?

古いもの・特殊なものでない限り、民生用機器はセンタープラス(中心がプラス極)で統一されている。
EIAJ規格のジャック・プラグでセンタープラスを表す場合は、次の図の上段の記号(JEITA CP-1104Bの01030、IEC 60417-5926)が使われる。
ただし楽器・音響機器では伝統的にセンターマイナスが採用されている。
センターマイナスの極性を表記する場合や、EIAJ規格ではないジャック・プラグの極性を表す場合は、次の図の下段の記号が使われる。
極性が異なるACアダプタを使う場合は、極性変換アダプタが必要となる。

極性を表す記号の例
上段:極性統一形の極性記号、下段:センターマイナスを表す記号

4極ステレオミニプラグのピンアサインは?

スマートフォンやノートパソコンのイヤホンマイクで使われてる4極小型単頭プラグ(φ3.5mm、EIAJ RC-5325A)のピンアサインは、CTIA(Cellurar Telephone Industry Association)/AHJ(American Headset Jack)規格と、OMTP(Open Mobile Terminal Platform)規格の2種類がある。
ノートパソコンやタブレット・スマートフォンではCTIA/AHJ規格準拠が主流だが、ごく一部のスマートフォン(MEDIAS・2011年モデル以前のXperiaなど)ではOMTP準拠となっている。
CTIA規格では、プラグのチップ(先端)→リング1→リング2→スリーブ(根元)の順に、LRGNDMIC。OMTP/AHJ規格ではLRMICGND

4極小型単頭プラグの例

オーディオ機器の入出力端子の電圧は?

基準レベルは0.5Vrms(-12dBm)、最小が0.2Vrms(-20dBm)、出力の最大が2.0Vrms(19dBm)、入力の最大が2.8Vrms(22dBm)、直流成分±5mV以内となっている(EIAJ CP-1203Aより)。

※Vrmsは電圧の実効値。